そもそも比国における医師免許の発行を私は求めて争っていたわけですが、政府と私の考え方の違いは、上の英文内にあるReciprocityなる言葉についてです。

Reciprocityとは、いったい何でしょう?

日本語では、「相恵主義」と訳されることがあります。
国際法上では、例えば、A国人がB共和国を訪れた際に受けた待遇と同じ扱いを、A国政府はB共和国人がA国を訪問した際に与えるというものです。

私のケースの場合では、日本国において、わが国政府は国籍のいかんに関わらず医師国家試験に合格した者に医師免許を与えています。フィリピンの方が日本に来て試験に合格すれば、医師として働けるわけです。
そうであるなら、日本人である私が必要な資格を得た後、フィリピン医師国家試験に合格をしたのであるから(その点数まで報道記事に載っているのは、ちょっとですが) 私に医師として働ける資格を与えなければいけないはずです。

しかし、フィリピン政府の言い分は、実際には日本語で施行される日本の国家試験にフィリピン人が合格するはずもなく、したがって本当の意味でのReciprocityは存在してはいないというものでした。

こんな屁理屈はありません。そもそも日本で医師をしようと考えるフィリピン人はいないでしょうアメリカ合衆国に行ったほうが高待遇を得られるからです。仮に、日本で働きたいと思うフィリピン人医師がいたら、日本語を学び試験に合格できるでしょう。実際、NHKの国際放送で日本語を学び日本国の医師国家試験に合格したオーストラリア人がいます。

問題は門戸を開いているか、どうかであって。言葉の壁などを持ち出すのはお門違いです。志ある者に言葉や文化の違いなど大した障壁ではありません。私だって、その国の言語で試験を受けていたのですから。

まあ、フィリピン政府の本音は、外国人に免許を与えたくないというだけです。
実際、フィリピン共和国憲法には、プロフェッショナル・ライセンスは比国人だけに与えられるべき権利だとあります。
したがって、医師に限らす弁護士、会計士から土木技師といったライセンスまで、外国人で取得した人はいません。取ろうと思う人間が出てこないからではあるのですがね。
でも、今後、そういったライセンスを彼の国で得ようとする者が現れたら、私の判例が参照されるわけです。


ここから先は、野犬のような人間の奮闘記として読んでください。
メモや日記をつける習慣はないので、事実の経時的要素は記憶に頼っています。
思い違いもあるやもしれません、なので、物語として扱ってください。

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